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2016/02/15

一日の始まり・弐

トン、トン、トン、トン……と、廊下を歩く音、そしてそれが止むと同時にふすまが開き、微動だにしない布団の丸まりへ向けてかさねが声を掛ける。

「とうかちゃん。とーかちゃんっ?」
「…………」
「まだ寝てるんですか? ほら、起きてっ」

手慣れた動作で、丸まりを覆う掛け布団をひっぺがす。すぐに取り返そうと手を伸ばしてくる丸まりこと、とうかの動きを予測していたかさねは、無慈悲にもささっと折りたたんで手の届かないところへ置いてしまった。

「あぅ~……むにゃ……」
「むにゃ、じゃないです。起きてください、何時だと思ってるんですか?」
「ん~……暗いから、夜ぅ……?」
「それは、とーかちゃんが目をつぶってるからですっ! ほら、あけてあけてっ」
「いややぁ、まぶしい~」
「そんなだらしないことじゃ、牛になっちゃいますよ?」
「あ~、えーなぁそれ。うち、牛さんになるわぁ。がお~」
「それ、牛じゃないですっ!」

器用にも目をつぶりながら、猛獣? らしき構えを取るとうか。

「牛さんやし、食後はぐっすりやんな?」
「朝ご飯もまだ食べてませんよ」
「うち、実は仙人さんやねん。せやから、空気でお腹いっぱいになるんよ」
「寝続ける理由をムリにつけようとしないでください。あと、それを言うならとうかちゃんのご飯が今後は霞になりますけど、構わないんですか?」
「いややぁ、共食いしたいぃ~」
「寝ぼけながら、猟奇的なことを言わないでくださいっ! 単に、牛肉が好きってだけでしょう?」
「ちゃうよ、豚さんと鶏さんも好きやで~」
「知ってます。今朝は、そんな大好きな鶏が産んでくれた卵が食卓に並んでますけど。意味不明な理由で寝続けようとするなら、わたしが食べちゃいますよ?」
「え、たまご? 目玉焼き?」

パッと目が開いたと同時に猛獣の構えを解き、とうかは布団から頭を上げる。

「……あっという間に起きましたね、とうかさん」
「あはは~、さっきまで眠かったんやけど、かさちーと喋ってたら目ぇ覚めてもーた」
「はぁ、そうですか……で、どうするんです? 食べるんですか?」
「モチやっ。今朝、変な時間に起きてもうてな? お腹ぐーぐー鳴っててんけど、無理して二度寝したんよ」
「そのまま起きてくれば良かったじゃないですかっ」
「そうはゆーても、朝6時やで? まだ眠りたいやんかー」
「6時って……確かに早いですけど、二度寝はする必要ないと思います」
「うちの睡眠欲は、食欲ごときに負けられへんからなー」
「はぁ……なんの対抗意識ですか、それは。わかりましたから、食堂へ行ってください。とうかちゃんがそこをどいてくれないと、布団が干せません」

二度目のため息を吐いたかさねは、とうかを促す。

「おー、そか。ごめんなー? んじゃ、また後で~」
「はいはい、また後で。食事中に寝ないでくださいよ?」
「それは約束できひん」
「自信満々に言わないでくださいっ!」

かさねのいつも通りの反応に満足したのか、とうかはフニャッと笑いながら部屋を出て行く。

「はー、もう……とうかちゃんてば、いつもああなんですから」

心中の言葉をつい口にしながらも、とうかはいそいそと敷き布団を抱え上げる。

「ふーんふんふふーん♪」

そして、楽しそうに物干し台へと向かったのだった。
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