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2016/02/04

序章

ここがどこなのか、ですか……?
ええ、ええ。
知りたいのですよね。
ええ、ええ、もちろんですとも。
ご説明申し上げましょう。
少々長くなりますが、よろしいですか?
……かしこまりました。

では。
しばしのお時間を奪うこと、どうかお許しくださいませ。

まず最初に、結論から申し上げます。
ここは、あなたのおられる世界ではありません。
いわゆる、異次元世界です。

こんな経験はございませんか?
忙しい日々にようやく手にした休日。
しかし充分に睡眠を取っても、疲れがまるで取れないばかりか、逆に身体が重くなった……と言うことが。

あなたの世界には、至る所に次元の隙間が口を開けております。
普段目にすることはないのですが、眠っている時に身体から漏れ出た意識の一部だけが、そこへと迷い込むことができてしまいます。
そうして入り込んだ意識は、放っておくとそのままこの世界で迷子となり、本体へ……現実世界へ戻ることは、かなわなくなってしまうでしょう。
その結果、取り残された本体はと言うと、ちぎれた意識を喪失した事により身体が弱っていってしまいます。
それが、先ほど申し上げました『睡眠で疲れが余計に増した』状態なのです。

しかし、いつ頃からそうなったのか……それは、誰にもわかりませんが。
戻ることの叶わなくなった意識がいくつも集まり、この空間に『女性』と言う概念を生み出しました。
やがて『女性』は同時多発的にたくさん生まれ落ち、『彼女達』となります。
それぞれがそれぞれ、いくつもの思念体が集まって個を作り、人格を成したのです。

疲弊していた思いが集まり、自我に芽生えたせいでしょう。
彼女達の存在理由(レーゾンデートル)はただひとつ。
『癒やすこと』でした。

彼女達は、その思念の力を持って、ただ広がっていただけの世界に『空間』を作り出します。
空間はやがて大地を、そしてその上に様々な動植物を……さらには彼女達の存在を誇示する『建物』を、形作りました。
しかも建物は、次元の隙間をその内部に擁したのです。
そう……つまり、異次元へ迷い込んだ意識が最初に目を覚ますのは、この『建物』の中なのです。

隙間は、いくつもございます。
目を覚ます場所がどこなのか……それは、誰にもわかりません。

ところで、この次元の隙間へは、誰もが来られるわけではございません。
精神的・肉体的に疲弊した状態にある方が、世界からの脱却を願った場合に意識の流出が起こり、結果的にこちらへ来てしまうのです。
だからこそ、彼女達はまず最初に問いかけますよね? 「疲れているのでは?」……と。
それは決して、顔色や様子から判断したのではございません。
この場所にいること、それそのものが既に『疲れ』を極度に抱えている状態だからなのです。

部屋を訪れる方々には、例外なく『癒やされたい』と言う願望があります。
その思いは、無数に存在する『彼女達』と言う概念の中から、無意識に己の一番求めた存在を呼び寄せるでしょう。
そうして訪れた子が、あなたの目覚める場所に座っているのです。

彼女達がなすのは、世界へ迷い込んでしまった方に対する、魂の癒やしです。
それは時に迂遠で、直接的で、『お客様』であるはずのあなたをすべからく戸惑わせます。
しかしそれはみな、わずかな時間、迷い子であるあなたを癒やすための奉仕に他なりません。
だからこそ、この施設にはいつの頃からか、そのような俗称が付いたのでしょう。
―――『たまゆら(魂癒)の宿』、と。

さて、小難しい説明はここまでです。
この世界へ迷い込んでしまったあなたが求めるのは、どんな存在ですか?
……いいえ、答える必要はございません。

さぁ、身を横たえてください。
目を閉じてください。
……眠りについてください。
次に目を覚ました時……あなたの隣には、彼女の姿があることでしょう。

おやすみなさい、よい夢を。
おかえりなさい、またいつか―――
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