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2016/08/14

秋の味覚、大しゅーかく 参

―――そして、約30分後。

「これ、食べられるかな……?」

集合場所に立つかさねのカゴには、誰もが見慣れたいくつかのキノコと、見慣れたような見慣れていないような妖しいキノコが入っていた。

「ま、まぁ、とうかちゃんかみつなさんが選り分けてくれるだろうし、大丈夫……だよ、ね?」

カゴを覗き見ながら、かさねは自分を励ますように言葉を漏らす。

「それにしても……」

顔をあげ、とうかが消えたあたりの方向へ視線を向けるかさね。
約束した時間は過ぎたはずなのだが、誰も来る気配はない。

「飽きて帰った、とか……? う、ううん。さすがにそれはないか」

そうは言っても、とうかのことだ。飽きるよりも前に、かさねと来ていたことを忘れて1人で帰っていたとしても不思議ではない。

「っ…………」

夕食の時間、キノコ鍋を前に『かさちー、どこ行ったんやろー?』と本気で呟いているとうかを想像した途端、猛烈な不安に襲われる。
いくらなんでも、ありえない。しかし、ないとは言い切れない。

「……と、とと、と、とーかちゃーんっ!」

いくらしっかりしていると言っても、まだまだ子供だ。
そんな気持ちに押しつぶされそうになったかさねは、半泣きで走り出した。

***

───更に、3分後。

「…………どないしたん、かさちー?」
「う……な、なん、でも……んぐっ、ない、ですっ……」

とうかを見つけたかさねは、その瞬間、不安を感じていた自分が唐突に恥ずかしくなったらしく。
軽く溢れていた涙やら、ちょっと声を張り上げてしまった事実やら、自然と溢れそうになる笑顔やらを必死にごまかすべく、とうかでさえも訝しむほどに妙な感じになっていた。
……つまり、わかりやすく言うならば、混乱しているのだ。それも、この上なく。

「うん~…………?」
「あ、あんまり見ないでくださいっ!」
「お、おー……」

かさねに負けず劣らず、頭にいっぱいのハテナを浮かべながらも、これ以上なにか聞くのがはばかられたとうかは、黙っておくことにする。

「…………ずずっ、んっ」
「……鼻かめるモンなくて、ごめんな?」
「だから、なんでもないですっ……」
「そ、そか」

なんでもない子がこんなに鼻水垂らしているとしたら、それはおそらくなんでもないわけではなかったか、ヒドい風邪を引いているかの二択だろう。
いや、後者だったとしてもそれは既になんでもないわけではなかったと言えるから、ようは一択だ。

「トラに襲われたん?」
「ぐすっ……だから、いませんっ……ずずっ」
「律儀やな……」

こんな状態でもボケにツッコミを返してくるあたり、もしかしたらかさねは生粋の芸人気質なのかもしれない……とか、くだらないことをとうかは考えていた。

「こりゃ、うちもうかうかしてられへんな」

いったい、何への対抗心なのかよくわからないことになっていたが、とうかにメラメラとやる気が漲っていた。明後日の方向に。

「……あの、とうかちゃん?」
「ん、なにー?」

ようやく落ち着きを取り戻してきたらしいかさねが、何やら考え込んでいるとうかへ声をかける。

「さっきから気になってたんですが……とうかちゃんのカゴ、空っぽじゃありません?」
「む、気づかれてしもーたか」
「気づくもなにも、片手でブンブン振り回していれば、イヤでも気づきますよ……」
「ふっふっふ。コレはなー……と、あかんあかん。な、なんでもあらへんよー、あはは」
「……? はぁ、そうですか」
「それよりな。さっき、キノコがぎょーさん生えてるトコロ見つけたんよ。一緒に行かへん?」
「え、ホントですか?」
「おー、モチや。どないする?」
「当然、行きますっ」
「よっしゃー」

目をキラキラとさせながら、かさねは逆方向へと歩き出したとうかの後を追う。
その言葉に含まれる、小さな矛盾にも気づかないまま。

「くふふふ……」

そして、前を歩くとうかの顔には、まったく似合わない邪悪な笑みが浮かんでいるのだった。
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